雨が降る日は憂鬱だ と誰かが言った
ふと、窓の外を眺める、彼女
ひとつに束ねた黒い髪が、彼女がほうづえをつく度に、僅かに揺れた
彼女はいつもひとりだった
僕は隣の席だった でも、僕が話していたのは男子生徒ばかりだった
彼女と話すキッカケが、なかった
ある雨の日の放課後遅く 一人の教師が、校門を曲がって帰って行くのを見た
彼女が、エントランスにいた
井上誠 教師の名
真面目で熱心な授業をする、良い教師だった
その時、彼女がエントランスにいた理由
僕はなんとなく、想像がついた
彼女に親しい友達がいないこと 男子生徒の間ではたまに話題になっていた
心を閉ざしている訳でもない 僕から見たら、メガネをかけた普通の女子だ
単に、誰かと親しくなるタイミングを逃しただけなんだろう
…僕が、声をかけるべきなんだろうか
ごくたまに、そんなことを考えた
そして、それができない自分を、心のどこかで恥じていた
梅雨でもないのに、雨が続いていた数日間、彼女はレインコートを着て学校に来ていた